何晩か続けて月を見上げても、見慣れた模様は同じ場所にあるように見えます。暗い月の海の広い部分がいつも地球を向いているため、月は回転していないかのように思えるかもしれません。しかし、月は回転しています。地球の周りを1周する間に、自転軸を中心に1回転します。この同期は潮汐固定と呼ばれ、月のあらゆる面が順番に見えるのではなく、ほぼ同じ半球が見える理由です。
反対側の半球は、しばしば裏側と呼ばれます。そこが常に暗いわけではありません。月の周期のさまざまな時点で、月面の大部分に太陽光が届きます。ただし、極地方の深いクレーターの一部は永久に影に覆われています。月の公転軌道や自転、そしてわずかな見かけ上の揺れによって、私たちに見える範囲を説明できます。
公転1周につき自転1回
月は遠方の恒星を基準にすると、自転を1回するのに27.32166日かかり、地球の周りを1周するのにも27.32166日かかります。この周期が一致しているため、ほぼ同じ面が地球の方を向き続けます。月がまったく自転しなければ、軌道上で位置を変えるにつれて、異なる経度の面が見えることになります。実際には、月は進みながら着実に回転し、公転と歩調を合わせています。
身近なたとえとして、人の方を向いたままその人の周りを歩く様子を考えてみましょう。相手から見える頭の側面はずっと同じでも、1周する間に自分は1回転しなければなりません。月の自転は、夜ごとの変化に気づきやすい地球上の目印がないため、わかりにくいのです。
27.32166日の自転周期は、満月から次の満月までの期間とは異なります。月の満ち欠けの周期は29.53059日です。月が地球の周りを公転している間に、地球と月の系も太陽の周りを移動するからです。月は1回公転を終えた後、太陽と地球に対して同じ位置関係に戻るために、もう少し進まなければなりません。月の満ち欠けの解説では、太陽・地球・月の角度が変わることで、私たちに見える満ち欠けがどのように生じるかを説明しています。
潮汐力が月の自転を同期させた仕組み
潮汐固定は、重力が回転する天体に長い時間をかけて作用した結果です。地球の重力は、月の地球に近い側を遠い側よりも強く引きます。この力の差によって月はわずかに引き伸ばされ、潮汐変形が生じます。月の自転と公転が同期していなかったころ、この変形は地球と月を結ぶ方向にぴったりとは揃っていませんでした。その結果生じる重力トルクが月の自転を変化させる一方、内部摩擦によって回転エネルギーが散逸しました。
こうした作用が続き、月の自転は次第に遅くなり、やがて1回転にかかる時間が1公転と同じになりました。この同期した状態では、潮汐変形は地球とほぼ同じ方向に揃うため、自転を変えていた周期的なトルクは大幅に小さくなります。潮汐固定は、片面を静止させる特別な力ではありません。自転、重力、エネルギーの損失によって生じる安定した状態です。
潮汐の影響は、今も地球と月の系で重要な役割を果たしています。潮汐相互作用によって系の中で角運動量が移動するため、月は年に約3.8センチメートルずつ地球から遠ざかっています。この動きは一度の観測では見えませんが、月の固定された自転と、公転と自転の間で続くやり取りを結びつけています。
裏側は暗黒面ではない
裏側とは、単に地球とは反対を向いている半球のことです。月が地球の周りを公転する間、表側と同じように太陽光を受けます。満月のときには表側が照らされ、裏側の大部分は太陽とは反対を向いています。新月のときには裏側が照らされ、表側の大部分は暗くなります。月が満ち欠けするにつれて、この周期が繰り返されます。
ただし、月面のすべての場所が日向と日陰を交互に経験するわけではありません。極地方では太陽が地平線の低い位置にとどまります。深いクレーターの底の中には、周囲の縁に遮られて太陽光が決して届かず、永久影領域となっている場所があります。こうした特別な場所が生じるのは、局地的な地形と太陽高度の低さによるもので、裏側にあるからではありません。
そのため、「月の暗黒面」という表現は誤解を招くことがあります。裏側を指す俗な言い方として使われることはありますが、太陽光が決して当たらない半球を意味するものではありません。月の満ち欠けの日付や時刻が周期を通じてどう変わるかは、月ごとの月齢カレンダーをご覧ください。
わずかな揺れで月面のより広い範囲が見える
地球からは、時間を通じて月のちょうど半分が見えるわけではありません。月の軌道はわずかに楕円形なので、公転速度は変化します。地球に最も近づくときは速く、遠ざかるときは遅く動きます。一方、自転速度はほぼ一定です。そのため、公転速度の変化によって、月は左右にわずかに揺れているように見えます。この見かけの動きは経度秤動と呼ばれます。
緯度秤動は別の要因によって起こります。月の自転軸は黄道面に対して1.54度傾いており、軌道面も黄道面に対して5.14度傾いています。これらの角度が合わさることで、軌道上の位置によって、月の北極または南極の向こう側が少し見えるようになります。月までの距離や地球上の観測者の位置も、見え方にわずかな影響を及ぼします。
秤動によって裏側全体が一度に見えるわけではありません。時間をかけて、見かけ上の縁の向こう側をのぞき見ることができます。合計すると、月面の約59%は、いずれかの時点で地球から見ることができます。ただし、一瞬に見えるのは約半分までです。このゆっくりとした見え方の変化が、月面の詳細な地図が、普段の視界で中央に見える面の先まで広がっている理由です。
地球から観察できること
この現象を観察するには、月の縁近くにある目印となる地形を選び、日を変えて見比べるとよいでしょう。秤動によって見かけ上の月の縁が移動するため、縁に近いクレーターや暗い月の海が、ある日には別の日よりも多く見えることがあります。望遠鏡や双眼鏡を使わないと変化はわずかです。また、空での月の向きも変わるため、比較が難しいことがあります。同じ地形に注目し、月齢が近いときの見え方を比べてみましょう。
見え方は、観察する時刻だけでなく、地球上のどこにいるかにも左右されます。都市別の月情報ページでは、現地の月齢と照らされている割合、月の出と月の入り、高度と方位角、距離、現地の天気を反映した空の見通しを確認できます。観察の計画には、月を見るのに最適な時刻の解説で、月齢や現地の条件が月の見える時間帯にどう影響するかをご覧ください。月の自転と公転の同期によって、見慣れた面がいつもこちらを向いています。じっくり観察すれば、秤動によってその向こう側も少しずつ見えてきます。